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熊本市東区八反田1丁目14-8

発行者:福島 宏

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 熊本市内で数病院を運営するK会の理事長が母の遺産である古い住宅を「地震で被災した」として公費解体を申請した。この事実を知った相続人の一人が熊本市に抗議した為解体は見送られた。月収200万円と云われるI理事長のこのみみっちい行為に“何故?”の声が挙がっている。


 熊本市中央区の一般財団法人K会は、市内に病院と特養ホーム等を運営する法人で、現在のI理事長は二代目である。熊本では古い歴史を持つ医家で、二代目のM院長の時代に拡大、財団法人化した。二代目院長(理事長)は3人の子宝に恵まれたものの女児ばかりであった為長女がI氏と婚姻、M氏亡き跡の法人を継いで理事長に就任して今日に至る。とこれまでは序章。

  I氏は三女一男の上から2番目に生まれた。途中改築はしているが写真の家で生まれ育った。二人の姉妹達も夫々結婚して家庭を持ったが、家は姉一家と母が居住していた。その母は平成8年頃死亡、土地と家は4人の子供達が4分の1ずつ均等に相続して共有者となった。家はそのまま長女一家が居住していたが、姉が亡くなり、夫も平成15年頃逝去した。一家には子供が居たが東京に住んでいる為、以後家は無人となった。母が存命中、I氏は道を挟んだ向い側の国有地(母の代からの借地)に「母と一緒に住む」として近代風の家を新築して居住していた。(以後I氏の実家を旧家と称する)。新築した家には数年程住んだらしいが、I氏が院長を務める病院が改築された際、最上階に居宅を併設したので生活の場はそこに移った。先の地震で旧家は被災したものの「半壊までには至っていない」と親族の一人は語る。しかしI氏は平成28年5月「大規模半壊」と申告してこの家の罹災証明を市から取得した。その際I氏は旧家を現住家屋とした可能性がある。熊本市は現地未調査だったと云われ、空家と見抜けず罹災証明書を発行したのである。

 I氏が何の目的で罹災証明書を取得したのか不明だが、後にI氏がこの罹災証明書を使って熊本市に公費解体を申請したのである。地震保険金300万円も支払われた。旧家の固定資産税と水道の基本料金、地震保険料はI氏が支払っているが、4人の共有物件であれば地震保険に加入するには全員の同意が必要とされる。これらの諸問題は今年に入って他の親族が知る事となったが、それまではI氏が全て単独で行っている。問題が発覚したのはI氏が公費解体を市に申告してからである。解体するにはその物件の所有者の同意が必要だが、共有物件については全員の同意書、印鑑証明書の添付が必要である。単独で公費解体を申入れたI氏に対し市の担当者が前記同意書の提出を求めたので発覚に至った。



I氏の解体予約申請
親族の猛抗議で熊本市は却下
 熊本市の担当者から共有者の同意が必要と告げられたI氏は初めて他の親族に同意を求めたのである。平成29年3月10日付でI氏が二人の親族に宛てた同意依頼文の要旨は以下の通りである。

「ながらくご無沙汰いたしております。本日突然お便りいたしましたのは○○の家(○○は家の所在地名)○○家居住(○○家は最後に住んでいた親族名)の公費解体の件です。周囲のほとんどの家が大規模半壊になっており、向い側、隣2軒もすでに解体されております。解体手続きをと思いながら、母との思い出もあり、手がつきにくいまま時間が経ってしまいました。ところが手続きの期限が3月一杯とのことを聞き、解体の申請を急ぐ必要があり、同意のお願いを申し上げる次第です。急に勝手なお願いですが、共有者の方々の同意書、印鑑証明書が必要ということでご同意をお願い申し上げます」としている。この手紙で事情を知った親族とその夫が市の担当課に問い合わせ事実を知った。親族の一人は「事前に相談があれば事情は変わっていた。古い家だが一族の思い出が詰まっており、改築した部分は地震で損壊したが、外見はご覧の通り問題はなかったので解体する気はありませんでした」と語る。親族がすぐに区の福祉課に同意しない旨を通告すると共に担当課長に「罹災証明書の虚偽申請とそれに基づいて罹災証明書を発行した市の責任を問う」として異議申立てを行った。

 市は3月17日にI氏の申請(持参したのはI氏と親しく往き来していた親族)を却下した。また、市の担当課長から3月27日付で「申し立ての虚偽申請については刑法等に触れていない。当該家屋の解体については現在、市に申請がないため詐欺未遂にも当たらない」と返書が届いた。抗議した親族は「この課長はI氏が3月始めに申請した予約書の存在と、同17日に却下となった経緯を認めたがらない。I氏が県や市の外部委員などを務める有名人だから“忖度”しているのではないか」と怒るが法的には課長が云う通りである。

 但し市の内部連絡は不充分でI氏から5月26日付親族宛の手紙には「一昨日熊本市のT様という震災担当の方から『公費解体申請の期限が3月一杯で過ぎており、書類は整いましたか』というお電話がありました。二人同意書がありませんと申し上げましたら『折角広く解体支援をご利用頂くようにつとめているので早く書類を用意して下さい』とのことでした」と書かれ、この時点でも公費解体を諦めていない様子であった。年収2000万円を超えるI理事長のこのみみっちさは何処からくるのか。



親族が県警に相談
 熊本市や県の医療に係る審議委員などを務め、著名人で富裕者のI理事長が独断専行した事でI氏の妹が激怒した。本人は女性という事もあって夫のT氏が本人に代り、熊本市に抗議したのは別項で記した。熊本市は「各担当部署と相談した結果、刑法に触れる行為はなかった」と回答した。但し回答の第3項に「当該家屋の解体については、現在、市に申請がないため詐欺未遂にも当たらないと考えます」の部分にT氏は怒る。「回答した福祉課長は、同課が虚偽申請と分かった為17日に申請(予約書)を却下しているのにこの部分は知らん顔をしている。この却下の事実をこの課長が認めないのが許せない」と語る。

 T氏は「他に法的手段がとれないか」との思いから県警本部の県民相談室を訪れたのである。相談を受けた窓口担当者は担当部署に連絡、対象物件が存在する所轄署に連絡した。所轄署の担当者に実情について説明した数日後、担当署員からT氏に連絡があり「今日I氏の勤務先に行って指導してきましたのでご了承下さい」と云われたと云う。T氏は「全くの白という事でもない様だが、立件出来る迄の証拠が不充分だった様だ。」と不満を語るが、警察としては限界であろう。T氏と妻は「I氏がきちんと自分の非を認めて謝ってくれればこちらの怒りも収まるが、『同意はしない』と云った後5月26日の便りを最後に音信はない」と話す。ある意味でこの件は身内同志の争いではあるが、I氏が病院グループK会の理事長であり、公的機関の委員を務めていること。10年以上の空き家を被災家屋として公費解体を図ったこと。4人の共有物件を一人だけ同意を得て他の二人には知らせないまま解体申請を行ったこと。共有者の同意を得ないまま地震保険に加入したこと等が親族の怒りを買ったのである。それにしても別荘や自宅、マンションなどを所有する資産家が僅かな解体費用を惜しんで公費解体を図った意図が理解出来ない。

 最後にI氏の医師としての技量は、と云えば“完全なヤブ医者”と断言出来る。ある女性患者が咳が止まないのでI氏の診察を受けた。I氏は診察をせず風邪薬を処方した。二日後女性患者は日赤で診察を受けた。医師は即車椅子を準備、そのまま数日間入院した。病名は重症気管支喘息であった。


I理事長が共有者に知らせず公費解体を目論んだ家屋



新57号線トンネル工事
県南業者落札に不満
 下の「嘆願書」は、熊本県建設業協会会長、熊本県建設政治連盟会長の肩書を持つ橋口光徳氏が国会議員巡りをした時の文書である。


橋口会長が族議員に訴えた嘆願書表紙



嘆願書を辞書で引くと「事情を述べて願うこと。なげきねがうこと。哀願。『助命を―する』」とある。嘆願書の内容は右の文書を読んで頂くと分ると思うが要旨を述べる。熊本地震で大きな被害を出した立野地区の国道57号線の新ルートとして国交省が考えたのが外輪山にトンネルを通す案である。大津町引水から阿蘇市赤水までの全長13キロの内、トンネル部分は3・65キロで、去る3月10日に入札が行われた。工事は阿蘇側からと大津側から同時着工を計画、阿蘇工区は安藤ハサマ、丸昭建設(人吉)地域維持型JVが111億円(税抜)、大津工区は清水、吉田組(天草)、松下(芦北)地域維持型JVが103億円(税抜)で落札した。

 他に災害復旧工事として、崩落した阿蘇大橋に代わる“新阿蘇大橋”工事用上下部道路を大成を頭としたIHIインフラ、八方建設(菊池)JVが52億円(税抜)で落札している。橋口会長はこの4工区の頭となったゼネコンとJVを組んだ地元A1業者に対しての“怨み節”である。即ちゼネコンは「地域の事は考えず受注のみに走り、地域に疑念を持たれる大手業者が受注した結果、地域との間に溝ができ復旧に支障をきたしている」ので「受注者側に強くご指導をお願いいたします」と一寸意味不明の事を述べている。「地域に疑念を持たれる大手業者」とは受注した丸昭、松下、吉田(何れも県南)、八方(県北)を指していると思うが、土木業者に“疑念のない業者”が居るのであろうか。橋口氏が代表を務める橋口組も「某有力県議と癒着、いい仕事をとっている」と“疑念”を語る同業が居ますよ。要は「県南の業者と組んだJVが落札したのはけしからん」ということ。事情通は「橋口会長が自分と仲良しの業者とゼネコンと結びつけようとしたが意のままにならず、たまたま県南の業者が組んだJVが落札したので腹立ち紛れに陳情して回った様だ」と語る。

 これらJVの落札価格も、不当に安かったり、高値でもなく“妥当”な価格と同業他社のトップは見ている。文中「1JVが2件の工事を受注した」とあるが、新橋梁建設の為、白川両岸に工事用道路が必要であるが、国交省九州整備局熊本復旧事務所関係者は「分割発注の考えもあったと思うが、一括発注の方が価格面や、工事の進捗調整などの利便性を考えたのではないか」と話し、落札した大成を頭にしたJVに便宜を図る意図はなかったと見る。橋口会長が云う所の「地元に精通した企業が4本とも受注できず、全てが県南の業者が参画したJVが受注するという結果になりました」は間違いで、前述した様に県北菊池市の八方建設が大成とJVを組んでいる。「…被災地阿蘇・菊池支部よりクレームが県協会本部に届いている」はおかしい訳で、阿蘇の土木業者の不満を代弁したのであろうか。前文に続いて「今業界が一枚岩になりこの難局を乗り越えなければならない時に、このままでは私ども業界は四分五裂になり、力が半減してしまう…」とあるが、四分五裂の口火を切ったのがこの文書で、この文書を携えて国会議員回りをしたと知った丸昭建設の社長が同協会の副会長を辞めてしまった。県南とか、県北など区分せず、県内全体の建設業者を統率するのが建設業会会長の務めと思うんだか。

 文書最後の「1、現在県内は人手、機材、車両ギリギリのところで復旧に取り組んでいる状態です。県外企業の参入時は人、機材、車両全て県外から調達する事を発注時に特記書に記入させるよう、発注者側にご指導をお願いいたします」に至っては嫌がらせ以外の何物でもない。この程度の文書を携えて族議員を訪ね歩いて如何ほどの効果があるのであろうか。熊本県建設業協会会長にしてはお粗末な行動としか云えない。その橋口会長だが、弱小建設業者の切り捨てでは積極的に動き、結果的に現在の人手不足を招いた片棒を担いでいるのである。別項で述べるが、熊本県土木部が平成23年4月、県発注の土木工事(1千万円以上)の参入基準をAランク以上(当時のランク付け)に改める案を公表した。この基準見直しでB、C、Dランクの零細業者約1500社が切り捨てられる事になる。この時橋口会長は「業界の足腰を強化の為切り捨て已むなし」と土木部監理課案に同調している。時の政権は民主党であった。



人材不足 蒲島知事が強行
土木部主導で業者切捨て
 一般の県民は勿論、地震の専門家さえ予想しなかった未曾有の熊本大地震が発生した。震災復旧の基本は行政と土建業者の連繋にある。その両者は震災後数カ月はバラバラ状態だった。県関係者はその原因を「偏に蒲島知事の指導力不足にあった」と語る。本震発生後の言動は「正に学者上りらしく組織を動かせる状態ではなかった」と聞く。慌てて村田副知事(3月に辞職表明6月議会の承認待ち)を呼び出し対策に当たらせた。他にも「本震後の某日蒲島知事に1日の空白があった」と高度の情報を得て追ったが、まだ解明には至っていない。面白い情報なので継続するつもりでいる。と、横道に逸れたので本題に入る。

 震災復旧の足を引っ張っている原因の一つに建築業者不足が挙げられている。熊本県は平成22年から業界の再編に着手していた。当時は民主政権下にあり「コンクリートから人へ」のキャッチフレーズの下、公共事業の削減が行われ、少ないパイを業者が奪い合っていた。県は蒲島知事の意向を受け、弱小業者の再編に動いた。再編と云えば聞こえはいいが要は自力で受注能力のない業者の切り捨てである。当時約7200業者が乱立していたと云われ、九州整備局内でも抜きん出ていた。別欄でも記したが、熊本県は、これらの業者を淘汰すべく、格付け基準を見直した。その結果Bランクを含む零細業者が3年余で60数%減ったと云われる。県建設業協会加入会員数も急減(西日本建設新聞社刊協会員名簿)した。

 こうした中、平成25年発生した九州北部豪雨で県内も大きく被災した。県が主体の災害復旧工事は被害が大きかった阿蘇振興局課内管内で激増したが、地元業者にA1クラスが少なく他地域からの応援を得て何とか凌いだ。この頃から県や各自治体発注の事業で「入札不成立」が続出しだした。東日本大震災復旧工事が本格化して以後、建設資材の高騰、人材不足が慢性化「県が計算する予定価格では赤字必至」と入札不参加業者も増加。業者自身が計算した金額で入札したりで、県の予定価格を大きく上回った。平成28年4月1日現在の県内業者(協会員)は714社まで減少したが、県とタッグを組んだ協会側は「入札参加資格の引き上げで250万円~1千万の業者を減らす」とした矢先の熊本大地震である。「消え去った零細業者は元々体力がなかった」と云えばそれまでだが、県や熊本市が他の策を講じて育成に力を入れていれば今程の人手不足は生じなかったのではないか。自治体が零細業者を抑える事に汲々とした結果が今出ている。



県・熊本市の公共工事政策
地元業界の育成考慮せず
 熊本県土木部が50年近く続いた年間完工高を基準にした建設業者のランク付け最上位「特A」制度を廃止、特Aを「A1」に、以下A、B、Cと4段階に変更した。元々特A制度は、当時乱立していた建設業界が県議を動かし「1事業9千万円以上の受注資格建設会社を絞り込む事にあった」と伝えられている。県側も「地元の業界レベルを上げ、地元ゼネコンを育てる」との大義名分で特A制度を導入した。しかし、その後も熊本独特のモッコス気質で業界内に小グループが乱立、他社が高額事業を落札すると次は採算無視で低価格入札、互いに足の引っ張り合いが続いた。蒲島知事誕生後一部の業者が某県議を取り込んで、先述した弱小業者の排除となる最低価格の入札参加資格(1事業1千万円)の引き上げを図ったと云われる。

 特A業者(年間100億円完工高)を育てるとして始まった制度の最終年(資料は平成22年度経営事項審査結果に基づく完工高順位)でも総合建設業で50億円を超えたのは僅か3社であった。その後業績を伸ばした上、「熊本地震もあって今期末は100億に届く建設会社が出るかもしれない」と語る業者も居るが。

 トンネル工事などは初参入の業者は足手纏いだが、過去に参入した業者を積極的県指導で参加させる事で地元業者でも工事が出来る様になる。熊本市の直近の例を挙げるとMICEと市民病院がある。MICEは市が産交Hと話し合って地元業者優位になる様建設計画を立てさせれば“下請的”JVにならずに済んだと云われる。また、新市民病院に至っては「あの程度の建物は地元業者で充分いい仕事が出来る」と複数のA1業者が語っている。それが何故か大林、西松と準ゼネコンと、地元からは豊工務店が参加した3JVが139億円で落札した。蒲島県知事、大西市長のゼネコン好みは止まらない。ゼネコンの儲けは全部東京に持って行かれるのである。県民、市民はこれらの現実に目を向けるべきではないか。今後暫くは震災復旧復興で国費、県費が投入されると思うが、地元業者優先の思考に切り替えてほしいものだ。一方で県は入札不調が続く中、指名入札をせず総合評価方式で業者を指定して発注する。持点10点だが、受注事業の単価が抑えられており赤字工事が続くとは某業者。
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