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発行者:福島 宏

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 左に揚げたのは、大成建設㈱九州支社が地元建設業者に送付した「桜町地区再開発」に於ける共同企業体(通称JV、ジョイントベンチャー)への参加呼び掛け書である。日付は平成28年3月30日付、回答期限は4月15日迄となっている。同事業の正式名称は左掲の参画呼び掛け文書のゴシック体に見られる通り「熊本都市計画桜町地区第一種市街地再開発事業施設建築物新築工事」である。発注者は熊本桜町再開発会社(矢田素史社長)で、平成27年6月に公募。別掲載の施行図東工区は大成1社、西工区は鹿島、大成、大林組が応募した。結果は東が大成、西は鹿島が選ばれた。大林組は元々“その気”があったとは云えない。公募条件は「プロポーザル方式」に加え、設計段階から施行業者が参加する「ECI方式」であった。これは過去の実力を問われるもので、特定の業者を優先する意味も持つ。

  スーパーゼネコンと云われる中で、大成、鹿島が豊富な実績を有し、この2社が選ばれて当然(仕組)と云える。1番候補に選ばれた鹿島だが、年が明けた平成28年1月受注を断念した。工事費に大きな開きがあったとされるが、県内有力業者は「東工区に比べ西は旨みが少ない筈、鹿島は下りて正解だったと思う」と語る。以上の結果、大成が「JVを組みましょう」と県内のAランクの建設会社(11社)に前述の参画希望の有無の案内書を送付したのである。受け取った某業者に話を聞いたのが4月初旬、参画の諾否回答前であった。その業者は「こんな親分日の丸条件でこの仕事を受ける業者は多分居ませんよ」と息巻く。その条件とは別紙「共同企業体構成条件における書類ヒアリング」のA、共同企業体への出資比率についての中で「出資比率は原則5%以上としておりますが、東工区と西工区共に弊社が施行予定者に決定したことから、各社の希望をお聞かせ下さい。(該当を丸で囲って下さい)①東工区西工区共に5%出資を希望致します。②東工区西工区共に5%以下の出資を希望致します。③東工区西工区共に5%以上の出資を希望致します。④その他の希望」となっている。

 B、共同企業体の会計方式についてでは「会計方式は、原則出資分配方式と考えていますが、未成バランスから立替出資が発生する可能性があります。各社の意見をお聞かせ下さい」①出資分配方式でかまいません。②プール方式に変更して下さい。

 C、共同企業体の見積提出価格及び損益について「企業体の見積提出及び請負契約の締結は、スケジュールの関係上、構成全社に見積提出及び請負契約締結に際し事前に損益の御説明が出来ません。損益に関しては大成建設㈱に一任して頂きたいと考えております。各社の意見をお聞かせ下さい」①見積提出価格及び損益については大成建設㈱に一任致します。②見積提出価格及び損益については黒字を前提として大成建設㈱に一任致します。③見積書提出価格及び損益については事前に協議させて頂きます。と記載されている。業者が大成に対して不信感を持ったのがこのC欄で、損益を大成に一任という事は、工事完工後、黒字が出れば分配金が出るが、赤字となった場合は「はい、それまでよー」で参加した業者は泣く事になる。某業者は「こんな虫のいい(大成にとって)契約でJVを組む業者は居ない、居たら余程の変り者だ」と断言する。



MICE
熊本市主体性持てず
桜町再開発会社の強気
 前述の通り桜町再開発事業については、平成28年3月30日付で施行会社の大成建設㈱が地元Aランク建設会社にJV(共同企業体)参画を呼び掛けた。回答は4月15日〆切であった。だが、大成が示した条件の悪さに「受ける業者は居ないのではないか」と業界で話題になった。そうした中、4月14日、16日の熊本大地震の発生である。筆者の推測だが、仮に応じた企業があったとしても、「この地震で参画出来ない」と断ったのではないか。Aランクの業者は数千万円、数億円の事業を多く手掛けている筈。未曾有の大地震で先ず行うのは自社が建設した建物所有者からの要望を聞く事であろう。新規事業に参入する余裕は全くなくなったのである。夏頃、2、3の業者に尋ねたが「自社の顧客の要望も一日延ばしの状態だ、JVに参画など考えられない」と答えた。この点は大成も理解しているのは当然で、「近県の業者と交渉中」との噂も入って来た。しかし、他県の業者が参画したとしても、職人、資材の手配等で膨大な費用が発生する訳で、現実味は薄い。

 3月31日付文書で、大成は事業費を東工区253億円、西工区を246億円と見積もっていたが、震災による人材不足(それまでも足りなかった)等で、この金額は10%以上増額されるものと思われる。この建設費の中で、熊本市は約300億円をMICE床取得に投じ、約126億円の補助金も出す。計426億円だが、この金額が増えるのは大規模事業では常識。総事業費約700億円とされるが、事業主体の産交ホールディングスの負担はで済む。勿論土地所有は同社だが、この土地(旧産交)取得の安さは、以前に小紙で採り上げている。

 工区の内、少なくとも市が取得するMICEについては、市が設計、監理等主体性をもって行うべきだが、主導権は当初から産交ホールディングス(後に熊本桜町再開発株式会社に移行)が握っている。補助金を含め総事業費の半分以上を出す熊本市が再開会社に“お願い”する弱腰振りである。

 平成26年12月、幸山政史市長からバトンタッチした大西一史市長だが、これが幸山市長以上にMICE建設にのめり込む事になる。ドラマーを自認する大西市長が考え出したのがポップス系を中心とした小規模ホールの増設であった。昇降式ステージで、客席は可動式450席プラス椅子席で750人。これに要する費用は10億円だ。




 これまでも折に触れて書いたが幸山政史市長が初出馬した際、選挙用チラシで謳ったのは三角保之市長時代に建設した「アクアドームくまもと」と「現代美術館」であった。アクアドームについては「一体何に使うのか」の謳い文句、現代美術館については「毎年赤字の累積」であった。「熊本市の借金3、100億円、人口40万以上の中核都市で借金返済額No.1」とも。後日聞いたが、このチラシは「県議時代の同僚大西と、幸山の兄の合作」であったという噂が流れた。どうでもいい事だが、初選挙で市民に問い掛けた“前市長の失政”を、それ以上の規模で開始したのが幸山であれば、笑い話にもなるまい。又、現代美術館については「毎年赤字の累積」と謳い、年間5億円の維持費がかかっていると攻撃したが、MICEも施設完成後の年間維持費は10億円弱、(積立金を含む)と高額である。施設収入を5億余と説明するが根拠は希薄だ。「5億円の維持費に対し、年間収入は数千万円しか見込めない」とも非難しているが、それをMICEで実現しようとしているのが幸山ではないか。前にも書いたが、幸山を自由に操ったI氏の意向で4選を諦め知事の座を狙ったものの、見事に外れた。目下“政治浪人”中の幸山だが12年間で残した市民への“付け”は大き過ぎる。

 幸山と同じくI氏の意向で市長候補に名乗り出た大西だが、「幸山路線」をそのまま踏襲してMICE建設に猛進している。選挙中からMICEの必要性を訴え「当選後は、精査して問題点を洗い出し、無駄を省いて建設する」と公約した。当選後その通り「精査」をした結果「自分好み」のコンサートを開催するのに都合の良い450~700人収容の「多目的ホール」の建設を決定した。これに要する費用は約10億円だが、このホールの増設で「経済効果が2億円増加する」(新ホール開設準備室)と“捕らぬ狸の皮算用”をしてみせる。その経費を浮かす為か、メーンホールの観客席を3層から2層に変更した。加えて幸山前市長の意を受けたのか、それとも幸山の意向を忖度したのか、それとも当人が並々ならぬ人材だったのか知らないが、「幸山の愛人」池田由香利を組織の中核である総務課長に昇格させた。総務課長といえば、政治倫理委員会にも関わる重要なポストであるが、幸山との密会の動かぬ証拠を握って報道した小紙により市の全職員が知っているW不倫の人物が総務課長の席についたのである。熊本市政治倫理条例第3条第4項は「市民全体の代表者として、その品位と名誉を害するような一切の行為を慎み、その職務に関し不正の疑惑をもたれる恐れのある行為をしないこと」とあるが、これらの条例を適用されるのは下っ端職員だけだろう。でなければ、「池田総務課長」は実現しない筈ではないか。

 因に「池田由香利は夫と離婚して住所が変わった」と市議の何人かから聞いた(市議は耳が早い)が、筆者は確認していない。又、「幸山と池田の仲はまだ続いているよ。今年(平成28年)の正月2人が歩いていたのを見た」とも聞いた。小紙としては「市長と部下のW不倫」報道で幸山辞任に追い込めると読んでいたが読みが甘かった。自民党市議団を始め他会派が幸山を擁護、市長の倫理責任を追及した北口市議、共産党市議らにヤジを浴びせる始末。裏で互いの利害が作用したのは想像に難くない。と横道に逸れたが、云いたいのは、幸山、大西ともにMICE建設で“引くに引かれない事情”があるという事だ。この事実究明の為多くの時間を割いて新聞発行も遅れたが、証言者は逃げてしまった。大西が大地震の後「MICEは凍結すべきではないか」と問われ「こんな時だからこそ市民を勇気づける為に必要だ」と強調した。熊本城の復旧に600億とか700億かかると云われる中、多くの企業、機関、個人らの寄付を仰ぎながらMICEへの新資金投入は納得出来ない。これまでもMICE建設は設計変更だ、何だといって半年延ばし、1年延ばしで来ているではないか。MICE部分を外して複合ビルを建設させ、震災復旧の目処がついてからMICEに代る建物を市単独で造るのも一案ではないか。(一部敬称略)



反響
大西一家の市長室避難生活
 前号1面トップで報じた「家族 市長室で避難生活」は大スクープであった。内容的には地震後“家族の身の安全を図って”より安全な市長室に泊めたというもので、大罪を犯した訳ではない。大西本人の倫理観の問題である。それを「大スクープ」と謳うのは、この事実を誰一人知らなかった(一握りの関係者を除く)という事実である。早耳の市議は勿論、市役所幹部、職員も小紙の報道で知ったという。一例を挙げる。

 市には県警から8名程が出向して各部署に居る。その中の一人にあの新聞を渡したのである。広げて1面の見出しを見た途端「あ、福島さんこれはないよ」と断定した。筆者が「裏を取った記事ですよ」と云ったら「いや、そりゃ違う。私しゃですね最初の地震からずっと5階の対策室に詰めとったとよ、これは有り得ん」とまだ否定する。そこで筆者が「得た複数の情報を元に秘書課長に会い、秘書課長も事実と認めたので記事にしたんですよ」と云ったら「そんじゃあ後から確認して見ます」であった。事程左様に大西一家(妻と5歳の娘)が市長室に避難生活を続けていたのが外に洩れていなかったのである。秘書課諸君の口の固さの証明か。

 で、小紙報道後、市民は勿論だが、市の職員、他官庁の幹部まで「これは公私混同ではないか、市長としてやるべき事ではない」と多くの声を聞いた。これは常識ある人達。常識がなく、過去に小紙の“筆誅”を受けた市議達は「福島のヤツが証拠もなく書いたつだろうたい。市長は一泊二日の緊急避難だから問題はないと答えればよかろたい」と語り合い、事実某市議(根拠が乏しいので匿名)が大西市長に“忠言”したとも聞く。福島奴と陰で云っているのは寺本、斉藤市議ら。筆者の前で云ってほしいな。
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