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発行者:福島 宏

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 熊本市議会予算決算委員会経済分科会(満永寿博分科会長)が、平成23年3月9日(株)熊本畜産流通センター(菊池市七城町林原9番地)を視察した。熊本市は食肉センターの機能移転について、経済連上村幸男会長と西嶋副市長が合意に達した直後であった。作動中の工場などの視察を終えて市議会用マイクロバスに乗る直前、畜流センター側から保冷用の箱を貰った。中にはハンバーグが入っていたという。視察先は食肉センター機能移転に伴う多額の補助金支出対象先である。議員らに良心の呵責はないのか問いたい。

 平成23年3月9日午前開かれた、熊本市議会予算決算委員会経済分科会(満永寿博会長・現市議会議長)は「予算11件、条例2件の議案を審査。審査方法は、各号議案について執行部の説明を聴取後、(株)熊本畜産流通センターと植木町の今藤地区工業団地の現地視察を行い、明10日から一括して質疑を行いたいと思いますが、御異議ありませんか」と諮り、「異議なし」の声で分科会を終了した。この提案に従い、午後から市議会用マイクロバスに乗り、畜流センターと植木町の工業団地予定地を視察したが、今藤工業団地については省略する。菊池市七城の(株)熊本畜産流通センターはリード部分にもある通り、熊本市食肉センターの牛馬豚一体化機能移転計画の提携先である。熊本市と畜流センター(県経済連)は同年2月18日、「熊本市食肉センターと機能統合に合意した」と公表。先ず豚は既存施設で対応出来るとして、牛の処理施設増築の負担金12億1300万円(市出資金4億円を含む)を新年度予算に計上した。これを受けての経済分科会の現地視察であった。

 畜流センター代表取締役社長は経済連会長が代々務めており、上村会長が社長を兼任していた。工場視察には上村社長は立ち会わなかったが「常務が工場長と案内した様だ」と関係者は語っている。場内視察後、今後の増設計画など画面で説明が行われて視察は終了した。議員に随行した執行部職員は宮原国臣経済振興局長、大山悟農林水産首席審議員と馬場食肉センター場長であった。マイクロバスに乗り込む議員一人一人に畜流センター職員から保冷箱が渡され「全員が受け取った」とは関係者の話。尚、市職員の名誉の為に云えば、職員らは公用車を使用しており「自分達はノサランだった」と云ってはいるが。この中味に感動したのか、大喜びした何人かの議員が後日、同僚議員らに「畜流センターに行ってハンバーグを貰った」と漏らした為、数人の議員が知る事となった。

 満永議員が経済委員長を務めていた平成21年6月23日にも、畜流センター視察を行っており、この時には「牛肉だった」と云われているが、6年余り前の事であり、事実関係は不明である。畜流関係者は「上からの指示がない限り独自に出す事はない」と語ったので、当時の会長である上村幸男氏に確認の電話をかけたが「私は経済連を退めた身だし、昔の事はよく憶えていない」という回答であった。

 経済委員会、経済分科会のメンバーは以下の通り。

 委員長、会長満永寿博、副委員長、副分科会会長島和男、以下委員。くつき信哉、藤岡照代、税所史熙、上田芳裕、田尻清輝、上村恵一、嶋田幾雄の各議員。嶋田議員は21年6月の視察は休んでいる。熊本市が補助金等の支出予算を組んでいる畜流センターと、経済分科会は直結していると云っても過言でないだろう。この不祥事の責任はどうなるのか。議運の真相究明を期待したい。



栗山陳述書目的は何か
大嘘吐きの“はったり”屋
 本記事を書くに当たって先ず栗山氏に謝りたい。小紙7月号2面3段目右から5行目、「別添資料『しゃにむに調印ばするなら、私が出て行くけん私の居らんところでしなはる』『その調印は認めんけんな』これも嘘」と栗山陳述書に対する批判は、その後の取材で「同様、もしくは似た発言を北口議員が行っていた」事が判明「嘘」と決めつけた表現について謝罪致します。

 その上で栗山氏の虚偽発言を究明させて頂く。

 栗山氏は昨年7月1日の三業者と市、経済連の初の「三者会談」の席上、「…局長さん(多田)、私は先生(北口)4月10日、畜流センターに行ったんですたい一人で。あんた達ちゃー誰も居らんかったから、アークホテルで会議のありよるて経済連の会長も畜連の会長もすぐ戻れて云えて云うて私がやかましゅう云うて戻って来ましたもん。そしたら私をにらみつけてですなあ、お偉方どんがにらみつけて私は一人ですたい。誰も行っとらん、私は一人で行って、誰かていう面しとったけん、なんか云うて喧嘩になりましたんですばい」この部分は7月号2面「人権侵害は栗山氏がやっていた」の見出しの記事の中でも記述している。

 この発言について畜流関係者に確かめた所「丁度熊本市からの豚の受入れについて、アークホテルで会議中で畜流センターの職員も参加していた。栗山氏の電話で工場長が戻りました」と話す。完全な栗山氏の作り話である。元々豚業者でもない栗山氏が何故この問題に介入したのか。関係者の誰も明確にその理由を答えられなかった。その栗山氏が何故陳述書を提出したのか真相に迫りたい。



北口和皇市議“暴言発言”認める
 前号発行後も北口市議の暴言問題について取材を続けた。畜産業者からは「暴言はあったが恐怖感を覚える事はなかった」と“調印式”出席者から聞いていた。市の関係者も「暴言と云えば暴言だが、私達は彼女の性格をよく知っているので又始まったか位にしか受け止めなかった」と語っていたので筆者も「いつもの癇癪玉が爆発したんだろう」と軽く受け止めていたのである。取材した畜産業者も「恐怖を感じる様な発言ではなかった」と答えた。市の関係者には「発言録」を基に聞いた為、録音前の発言は「大分強い事を云っていましたよ」程度の回答しか得られなかった。その後、取材対象を変えて聞いた所、以下の回答を得た。「調印式は形成的なものと解釈していたので20分位で終わるものと思っていた。その為、録音の準備はなかった。録音は北口議員の指示を受けて始まった。従って暴言は『発言録』にはない。当日は田副市長の挨拶に続き北口議員、多野局長と続く予定であった。しかし、会議場に皆で入った途端、北口議員がI氏が居ない事に気付き『何故Iは来ていないのか』と激昂、『馬場場長、ちゃんと案内はしたつね』とか『Nちゃん、どうしてあんたが連れて来んだったつね』と責めた挙げ句『新ちゃんの居らん所で調印式は出来んたい、今日の調印式は出けんよ』等々罵詈雑言を浴びせた。十数分続いたと思う。その後、北口議員も落ちつき『録音してよ』の発言で録音が始まったので『発言録』には残っていない」と関係者が証言。

 その数日後、北口議員の入院先に見舞いがてら訪れ、暴言の事実について聞いた。北口議員は発言の事実を素直に認め「仲介に重要な役割をした新ちゃんが来とらんかったけん、ついかっとなって怒鳴ってしまった。今は反省している」と語り、早急に関係者に謝罪する意向を示したが、8月末現在実行はされていない様だ。



 今春の統一地方選で熊本市南区選挙区で珍事が発生した。初の区割り選挙で激戦区の一つと見られたが、恰もそれを象徴した形となった。問題の候補者は民主党現職の田辺正信氏(64)と、無所属現職田中誠一氏(69)である。南区は定数8に対し、現職10、新人1の11人が立候補した為、現職2人は必ず落選する宿命にあった。前記二候補は当選ラインに同票で並んだ。公選法では同じ得票数の場合、くじ引きで決めるとある。南区役所で行われたくじ引きで田辺正信氏が好運を掴み当選した。敗れた田中誠一氏は無念の涙を飲んだ。が、問題はここからである。田中氏及び田中陣営は「無効票の中に田中票がある」と市選管に票の再点検を申し出た。この報道を読んだ筆者は「田中は卑怯者」という思いが湧いた。異議を申し立てるのであれば“くじ引き”前に申し立てるべきではなかったか。くじ引きに臨んだ以上、「くじ引きを納得していた」という事ではないか。若し田中氏がくじ引きで勝った場合、100%異議申し立ては行わなかったであろう。異議申し立てを受けた市選管は受理せずこれを棄却したが、田中陣営は納得せず熊本県選挙管理委員会に審査の申し立てを行った。同選管は申し立てを受理、目下(8月24日現在)票を再点検中である。厳しい選挙戦を戦った結果、数票であれ得票数で敗れたのであれば諦めもつくだろう。同数くじ引きの敗北に田中陣営も未練が残ったのは想像に難くない。だが敗けは敗け、敗北の後の票再点検の申し立てに異論を抱いた次第である。人間敗け方も大切ではないだろうか。



 3月16日、熊本市議会大会議室で開かれた畜産業者と熊本市、経済連(熊本畜産流通センター)三者による“調印式”場に於ける「北口暴言」が予想外の波紋を広げた。暴言そのものは「いつものこと」(市関係者他)として聞き流されたが、その僅か1週間後に当日の出席者(資格は不明)の一人、栗山重信氏が「熊本市議会議員によるパワーハラスメントについて」と題した陳述書を大西市長、三島市議会議長宛に提出した。この陳述書に対して熊本市は「パワーハラスメントがあったとの御指摘をいただきましたが、調印式に出席された方々から人権侵害を受けたとの申し出があっておりません。関係者の方々が不愉快な思いをされたことは残念に思います」との主旨の回答を行った。この回答に納得しなかった栗山氏は5月15日、同様の主旨の陳述書を満永市議会議長、藤岡同副議長宛に提出した。しかし、「色好い」回答を得られなかったのであろう、栗山氏は6月1日付「陳述書の提出について」と題した陳情書を熊本市議会事務局長宛に提出した。この栗山氏の陳述書については第1回目の陳述書が提出された後、4月20日付で出田新一氏が「栗山氏の文書に対する抗議文」を大西市長、三島市議会議長宛に提出した(出田氏はこれまでI氏と記述。畜産業者と栗山氏を北口議員に紹介した人物)。

 この問題は6月24日熊本市議会運営委員会に付され、委員会は栗山、出田両氏を参考人として事情を聴取した。その後、市側から石櫃農水商工局長、平田次長、馬場食肉センター長、多野総務局長らも呼び事情を聴取。その結果、議運としては「不当要求であったか否か」を「不当要求行為等防止対策協議会」で調査をする様大西一史市長に要望書を提出した。北口発言は前記協議会と政治倫理審査会の判断を仰ぐ形となっており、何れ厳正な判断が下されるものと思われる。

 小紙が追及したいのは、北口議員が“調印式”(小紙が調印式に「“”」を付すのは調印式を行うと発言したのが北口議員であり、相手は市の局長級、畜産業者である事から「公」の調印式ではないと判断をしていたからである。横道に逸れた、本題。

 市食肉センターの閉鎖は市の長年の課題であったが、同和を背景とする二人のベテラン市議がそれを許さなかった。その二人の市議が居なくなって「急速に食肉センター廃止案が浮上した」とは元市議。以後の動きは小紙既報の通りである。市が予定していた牛馬豚の一体化機能移設は、市側西嶋副市長、経済連側上村会長が窓口になって交渉。市側が畜流センターへの出資金4億円を含む総額24億円で畜流センターと「機能統合」の合意に達したのが平成23年2月中旬である(同3月9日経済分科会が畜流センターを視察、「ハンバーグを貰った」と複数の市議が自慢)。だがこの合意は上村会長の施設費用の増額要求(40億円)で御破算となった。西嶋副市長の交渉力不足から上村会長に足許を読まれたのである。慌てた市は移転先を模索した結果、“取り敢えず”牛を中央食肉センターにと10億円の補助金で決定。豚も同所にと思っていたらしいが、豚は脂肪分が多く浄化が難しいとして畜流センターに振り分けた。その結果、畜流センター(経済連)と交渉が成立、補助金も決定したが、肝心の取引き条件は畜流センターに任せっきりであった。その為処理金額、内臓等の条件が合わず、豚業者は鹿児島、宮崎、長崎等への処理施設に高い高速料を払って通った。ある業者は「市と畜流センターへの当て付けもあった。我々が利用しなかったら市の補助金5億4000万円の支出が問われると思った」と語る。しかし、3業者の内大手の業者は資力もあって永続出来るが、残り2業者が経費の高騰に耐えられず市に仲介を依頼したが「交渉は民々でやってくれ」と断られた。それでも途中から市が仲介したが、畜流センター側の意向に従い、3業者と個々に交渉の場を作った。O社は大手だけあって早々に取引き条件が成立、契約を行った。残る2業者は条件が合わず、困った挙句、北口議員に仲介を依頼、3業者、経済連、熊本市の「三者会談」が平成26年7月1日に実現、ここで業者側の要求を北口議員が纏め3月16日を迎えたのである。北口発言は別として、熊本市の無責任振りが充分お分かり頂けたと思う。



混迷した屠畜機能移転
経済連思い上がり・業者の我侭
 北口和皇市議の暴言発言が一部市議、メディアの批判を浴びている。北口発言については公的調査機関が設置されているので是非はそちらに任せて、小紙は事ここに至った熊本市の無責任体制を右に論じた。この欄では欲に駆られたJA熊本経済連と、これも欲ぼけ畜産業者について報道する。

 先ず経済連から。JA中央会とともに小紙が批判対象として10年来陰の部分を報道して来たのが経済連である。中央会も経済連も「会長に権力が集中し過ぎる」というのがJAに詳しい元幹部。二期6年勤めた上村会長だが、畜流センター問題が発端となって、昨年の再選前に園田中央会長から引導を渡された。それでも3選を狙ったが一票差で落選した。園田会長も5選を狙って多数派工作を行ったが500万円を渡して自分への投票を頼んだ人物が白票を投じた為、6対6の同票となり「くじ引き」の結果敗れてしまった。この園田会長が強く推して経済連会長のポストを得た上村会長だが、市食肉センター機能移転問題で意見が対立した。関係者の一人は、園田会長は平成20年6月に熊本市に対し「屠畜機能を統合しないか」と持ち掛けていた。当初その線で話が進み、平成23年、市が出資金4億円を含む24億円で妥結した事は前にも書いた。この24億円は「上村会長の独断」と云われ、改めて園田会長から40億円の話が出されたという。市はこの提案を拒絶、話は振出しに戻った。ここから市の迷走が始まったのである。

 当時、経済連は畜流センターの大規模改築に乗り出しており、多額の資金を必要としていた。「市食肉センターが廃止となればうちに来るしか途はない」と園田会長らが過信したのも無理はない。だが事は思い通りに動かず、結果的に「肉豚」だけを引き受ける形になった。畜流センターは、昨年度は市の補助金のお陰で黒字決算になったと云われるが、来期は間違いなく赤字を計上すると見られている。因みに熊本市が補助金算出の基礎となった畜流センターの一日当りの豚処理を1000頭としているが、小紙が報道の為収集した資料では、平成22年に新工場完成後の日当り処理数は800頭であり、800分の310頭で算出しなければならない。

 次は畜肉業者。前にも報道しているが、熊本市は昭和40年に市食肉センターを改築したが、その際「市は施設を提供し、運営は食肉業者が行う」とした。業界とは事前に打ち合せ済みで、業者らは前年の昭和39年8月、「熊本中央食肉市場(株)」を設立している。昭和40年4月から新組織による食肉センターの運営が始まったが、それまでの持ち込み業者の中の有力者らが新会社の役員を務める“仲良し会社”が運営するのである。加えて同和事業などの補助金を当てにした乱脈経営(当時の関係者談)で当初から採算を度外視した経営が行われた。処理料も安く据え置かれた為、県外業者も多く利用した。物価指数に応じた値上げも行わなかった。その為、毎年赤字を計上し、不足分は熊本市が補填した。その窓口の一つが平成5年1月に設立された「熊本市雇用開発協議会」である。同和対策事業の一つと云われ、「業務委託費」名目で解体業務を行う熊本中央食肉市場(株)運搬業務を行う「熊本県畜産全荷受(株)に毎年各3千430万円以上を支出。解体業務に従事する職員の給料年間1億6000万円以上を支出し続けた。この業者らの甘えが「食肉センターの閉鎖」に結びついたのは皮肉な結果であり、業者らの“自業自得”と云える。

 牛の処理機能移転先の(株)中央食肉センターで馬処理を巡ってこれと似た動きが見られるが目下大西市長は無視を決めている。



北口議員の功績
不用意発言で潰れた
 小紙6・7月号を読んだ読者や、市議、市関係者から「随分北口議員を庇っていますね」や「あの記事は北口議員に甘いな」との評を頂いた。筆者としては長年付合いがあるものの、「黒」を「白」として記事にはしない。発言そのものは栗山陳述書に対し「人権侵害と感じた出席者は居なかった」として熊本市も回答を行っている。各方面を取材した中から見えてきたのは「栗山陳述書」の謀略と、熊本市の豚業者への対応の無責任さであった。農水商工局長の「民と民の契約だから市はタッチしない」発言について関係者に糺した。関係者はあっさりと「市の不手際、努力不足」を認めた。「食肉センター年度内閉鎖を急いだ」点も「その通りと思う」と否定はしなかった。畜流センターにしても「係留所は既存の場所を遣り繰りして使う。内臓もボイルとは云っていない。最初から生でいいとしていた」と語っており、畜産業者(豚業者)との間に齟齬をきたしていた。

 畜流センターとの取引き条件等もあやふやであった。解決を業者に依頼されて仲介に立ち、纏めたのが北口議員であった。「調印式」については誰が云い出したか不明だったが、北口議員に面会が出来る様になって確認した所北口議員の発案と分かった。「暴言」についても、1面の見出しの通り議員自身が認めた。その中で「新ちゃん(出田氏)は私と業者を繋ぎ、その後も業者側に立って一緒に動いた。その新ちゃんが調印式に居なかったのでついかっとなってあぎゃん発言をしてしまった。今思うと恥ずかしかばってん、そん時は怒りを抑えきれんかった」と語る。明らかに議員との身分を忘れた暴言であり、品格を欠くものであった。弱者(畜産業者)側に立った余り、より熊本市と畜流センターを悪と捉えたのが大きな過ちで、夜郎自大が招いた結果と云える。



 本面に掲げた新聞は、7月12日付朝日新聞熊本版の記事である。記事の概要は「市食肉センター廃止に伴い、牛馬の処理機能を(株)熊本中央食肉センターに移転を計画。牛は既に同センターに移行、馬の処理施設も12〜来年1月頃にも機能移転が決まっている。しかし、同センターは今年3月期決算で1億2千万円余りの当期純損失、累積赤字は2億7千万円に上る。同センターが倒産すると関連業界に影響が出る」としている。

 この朝日の記事を読んだ筆者は「熊日がより詳しく報じている筈」と思って12日の熊日の紙面を探したがない。市の公表が10日(金曜日)の筈だから11日かもと思って当日の紙面も目を「ひょっとこの目の様に」凝らして探したが見つからなかった。この要望書は県内の業者らが大西市長宛「熊本市食肉センター利用業者との協議のお願いについて」と題する要望書で、担当部局の受理は7月9日付である。この要望書は熊日さんが大騒ぎで報道している「北口暴言」と「全く別問題」に見えるが、元々市食肉センター廃止に端を発しているのに変わりはない。北口問題は豚業者と畜流センターの取引き条件の不一致から発した。牛・馬は牛馬の取扱い業者と中央食肉センターが係わる問題であり、要望書を大西市長宛に提出した件は当然報道すべき案件である。熊本版とは云え、大手紙が報道した案件を何故熊日は報道しなかったのであろうか。小紙の様に特定読者を対象にしたミニ情報紙なら、報道するしないの選択に幅があってもいいと思うが、全国のローカル紙(県紙)の中でも購読数の上位に位置している熊日がこの様な案件を見送ったのは如何なる視点をもってきても納得が出来ない。県下の多くの家庭は、熊日一紙だけの購読が殆どではないか。それだけに熊日の果たす役割は大きい訳で、自ら報らしめる義務を放棄するのは如何なものか。



熊日何処まで偏向するのか
推測による要望まで丁寧に報道
 前述の通り、県下の馬畜産業者らが大西一史市長宛に提出した要望書の件を全く無視した熊本日日新聞(熊日)だが、ここでは「『北口議員が建築確認に必要な里道の境界確認で市に何らかの働きかけをしたと推測』して熊本市と市議会に調査を要望した」との報道の理非を論じてみたい。推測による調査要望は飽く迄“推測”であり、報道には慎重であるべきではないか。

 右下の記事は、平成27年8月22日付の熊日である。「市議が働きかけ、建築確認に遅れ」と一応「かぎかっこ」付きではあるが、一般読者はそこを読み取る程、日本語に通じているとは思えない。多くの人が「市議が働きかけた為建築確認に遅れが出た」と解釈するのではないか。

 概要は「中央区国府でサービス付き高齢者住宅を所有する会社の役員男性が21日、2013〜14年にこの施設を建設した際に、地域の大農区長を務める北口和皇市議(57)=中央区選出=から行政への不当な関与があった可能性があるとして、市と市議会に調査を要望した。北口氏に関しては、市食肉センターの機能移転に関する調印式を妨害したとされる問題で、行政への不当要求に当たるかどうか市が調べている。と書き、ここで『北口横暴説を強調』。役員男性や要望書によると書類不備のほか、境界が確定していない里道があったために建築確認が遅れ完成が延びた。役員側は境界確認で農区の了解をとる過程で、北口氏が里道管理者の市に何らかの働きかけをしたと推測。そのため完成が遅れたと主張している。後略」。

 この記事は明らかに北口議員に追い撃ちをかけたと読む。記事では施設の名前を挙げていないが、この施設はくわみず病院系列のサービス付き高齢者住宅「八王寺の杜」である。くわみず病院と云えば“共産党色が強い病院”と定評があるが、その系列の高齢者住宅だけあって入居料も庶民的に設定されている。北口暴言問題以後、共産党系市民団体が政治倫理条例に基づく北口市議の調査請求を目指して活発に動いている。その動きと、この「建築確認の妨害」調査要求は連動していると見ていいのではないか。公正中立を謳う新聞社が、こうした特定政党絡みの疑われる動向を詳報するのは偏に“北口憎し”があるのか。何れ書く予定だが「熊日がこれ程北口議員叩きに走るのは、熊日、RKKが熊本市と独占的に契約していた事業について議会で質問したからではないか」と評する議員も居る。

 しかし筆者は例え自社に不利な質問を行ったからといって現場の記者が上からの命を受けて動く程チャチな組織ではないと思っている。飽く迄北口議員の不徳が招いた結果だろう。ここで断言出来るのが、例え「北口議員が建築確認を妨害しよう」としても市の担当部署がその意向に応える事はないという事だ。一匹狼の北口議員より共産党市議団の方が存在感があり、力も強いのを市の職員は重々承知しているからである。



栗山氏の目的は何か
陳述書取り下げ一旦同意
 大西一史熊本市長、三島良之市議会議長宛「熊本市議会議員によるパワーハラスメントについて」と題した陳述書を提出した栗山重信氏だが、熊本畜産流通センター(菊池市七城町)職員に対して、北口議員以上に相手を侮辱した発言を行ったのは前号に書いた。陳述書に添えられた「北口和皇氏の暴言時の概要」については小紙の取材不足から「この発言は嘘」と前号で断言したが、その後の取材で一部を除き事実と判明した。3月23日付の陳述書は、主に社会益を第一義に考え「市民の厳粛な信託に応えるという熊本市議会議員の立場にある議員として相応しい発言ではなかった」として「市議会議長の見解を聴きたい」との主旨であった。この陳述書の回答は「人権侵害に該当しない」というものであった。この陳述書を栗山氏が提出した事を知ったO氏らが栗山氏に「何故あんな陳述書を出したのかすぐ取り下げてくれ」と申し入れた。栗山氏は「分かった取り下げる」と云った為、O氏らは栗山氏の自宅を訪れたが、何故かその夜は帰宅しなかった。その後もO氏らが「取り下げてくれ」と申し入れた所、栗山氏は「熊日のA(実名)から絶対取り下げるなて云われたけん取り下げられん」と取り下げを拒んだ。業者さえ「何故あの陳述書を出したか分からん」と云う栗山陳述書を次号で深読みしてみたい。



 熊本市が補助金支出を予定している(株)熊本畜流センターを視察した議員達が、同社から提供されたハンバーグを貰って帰った。相手の意図はどうであれ法的には贈収賄が成立する案件である。その時の委員長が、順送りとは云え、今春熊本市議会議長に就任している。市議の劣化が著しいと云う所以である。このメンバーは、平成21年と同23年に畜流センターを訪れているが、時恰も西嶋副市長と経済連上村会長のトップ会談が断続的に続いていた時期でもあり“手土産”は受け取るべきではなかったと思う。

 ◆2・3面は北口和皇市議に纏わる報道の総括とした。本文にも書いたが、熊本市、経済連、畜産業者、北口市議を含む4者が夫々猛省すべき事案であったと結論した。加えるならメディアの公正中立性も挙げられよう。報道しようと思う方向に事実を切り取って記事を作り上げる行為はメディアとして恥ずべき行為と知るべきであろう。4面は蒲島郁夫県知事が小紙を名誉毀損で提訴し、小紙が全敗した経過を書いた。本来、物書きが書いた記事を名誉毀損で提訴されるのは恥である。が、筆者は寸分も恥と思っていない。但し法への無知は恥じている。
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