職員早期退職勧奨と資産売却で狙った再建策失敗
右肩下りの事業売上げ
JA熊本経済連(正式には熊本県農業経済協同組合連合会)の事を書く前にJA熊本中央会の組織について書く。
通称JA熊本中央会と呼ばれているが、正式には「熊本県農業協同組合連合会」で、単協と呼ばれる県内各地に所在する14の組合の連合体である。この中央会傘下に、JA熊本経済連、JA熊本厚生連、JA共済連熊本、熊本県酪農業協同組合連合会(通称らくのうマザーズ)、JA熊本果実連、熊本県畜産農業協同組合連合会、熊本県養鶏農業共同組合、肥後開拓農業協同組合がある。これらの総師が前号で報道した園田俊宏中央会会長である。平成20年度から中央会傘下の信連、共済連、系生連が共通の会長制度を敷いた為、園田中央会会長が他の三連会長を兼務となった。これは三連の組織縮小に伴うものだが、各連合会の権力を一手に握った点に変りはない。JA経済連会長は、平成18年6月の総会で、坂本前会長が辞任(大分ゴタついた)、新会長に上村幸男氏(JA菊池会長)が選任されたが、当時某幹部は「上村さんは人がいいから園田会長が使い易いとして会長に就けた」とこの人事を批判した(決定は理事会)。
平成21年現在のJAグループの組合員は15万8千余人。JA経済連は農協の経済事業を行う役割を担っている訳だが、事業収益は右肩下りが止る様子はない。少し古いが、平成15年度に立てた再建計画を見てみよう。平成15年度に始った人員削減で、早期退職措置137名、同18年度50名、19年度38名の合計225名に加え、平成20年度22名が追加された。遊休資産売却計画では総合流通センター(熊本市長嶺町)8760坪を19億8千万円で売却。18年度クミアイプロパン本社土地(同八王寺町)。19年度、自動車センター(同近見町)、本山SS、養蚕飼育跡地(菊陽町)が売却される(資料入手当時)。しかし、これらの対策後の展望について、JA中央会、経済連共に何らの青写真を示すことはなかった。経済連傘下の(株)ユーフーズ(菊陽町曲手)は、熊本県や、民間会社が出資して設立したにも拘わらず平成20年までに3回の経営支援を行っている。経済連が扱っている農畜産物についてのシェアーも麦を除いて毎年低下傾向にあり、事業目標を取扱い実績が下回っているのが実情である。
経済連による「販売、購買事業の利用状況調査結果」によれば15年度の利用率で、米64・2、麦100%、畜産64・8、園芸93・4、イ製品93・4、園芸その他77・4%の利用率となっている。紙面の都合で省略するが、トータルで15年度86%、16年度85・3%、17年度83・4%と低下、20年度は80%前後に低下している。事業取扱高及び損益の推移を見ても各年度の目標を実績が上回ったのは製品販売のみ、他は軒並目標を下回っている。この傾向は今後も進む事はあっても止ることは先ずないと見るのが妥当である。TPPを待つまでもなく、賢い農家は、経済連を通さず消費者と直接取引きを行い、肥料や資材も業者から直接購入している。かつては資金の借入れや、ツケで物品が購入出来る便利な存在であった"農協"だが、貸出し金利が高い反面、買入れ価格は安いと気付いて農協離れが進んだのである。組織が巨大化したのも一因かもしれない。かつては農家の為の農協が、農協の組織を守る為の農協に化してしまったのではないか。使い込みが多いのも農協の特徴だ。地縁血縁で職員を採用し、日常の管理監督はなおざりであれば、事故が起って当然である。
(株)熊本畜産流通センターに弄ばれる
市営食肉センター移転先ドン詰り
熊本市が直面している問題の一つに熊本市食肉センターの移転問題がある。この事案は三角市長時代からの懸案事項であったが、幸山市政になって三期に入っても全面解決出来ないでいる。詳細は別の機会に報道するつもりであるが、これまで市営卜場を利用していた業者らの既得権益が絡んでおり、すんなりと片づく話ではない。市が機能を移転しようと計画している(株)熊本畜産流通センター(菊池市七城町)は、熊本県24・23%、農畜産振興機構同%、経済連38・55%が大口出資者となって昭和60年に設立、その後施設の拡張を行い、現在の資本金は16億5100万円である。
平成22年に完成した最新施設は一日の処理数牛110頭、豚800頭(会社概要より)となっている。役員は、大口出資者から出しているが、代表取締役は経済連会長が務めるようで、松村秀一前会長の後任に上村幸男経済連会長が代表取締役社長に就任している。同社は2人代表取締役制をとっており、あと1人の代表取締役専務は緒方英一氏(経済連から出向)が就任している。
熊本市は畜産センターへの機能移転費として12億円を計上、議決もされているが、受容れ側が「あれこれいちゃもんをつけて」話がストップしたままである。裏事情を知る人物は「畜産センターが市の要求を飲む事は先ずない。現在でも処理能力は目一杯で稼働している。例え市が出資して多少処理能力を上げたとしても対処出来る能力には達しない」と語る。他にも「畜産流通センターの目的は市から金を引出すこと、金さえ貰えばあとは知らん顔をする」と恐しい事を話す。その裏付けになるかどうかは分らないが、熊本市の西嶋副市長を上村会長が頻繁に訪れているが「いつも2人だけでひそひそ話しているだけ。何故関係部署の職員を同席させないのか」と不審の声も聞えてくる。この2人を含む数人で高級料亭に通っているという話も洩れ聞くが、これは未確認とお断りしておく。
上村会長は表面上市側との協議を中断し、その理由も新聞紙上(熊日23・12・9付)で述べているが、畜産流通センター側(園田中央会長も取締役)は熊本市の「足許を見ている」のが実情の様で、この問題はどう展開するか予断は許さない。熊本市は畜産流通センターに拘わっているが、目下食肉大手のO社、S社など数社が豊野町に食肉処理場を建設中であり、これに出資した方が得策に思えるのだが。但し市に強力なセールスマンが居ない為、どっちに転んでも市税の浪費は免れないとの声も多い。
畜産流通センター施設拡張で疑惑
排水設備実績不足の社に発注
JA熊本中央会関連組織での不祥事は「歴代会長から今日に続いている」と云っても過言ではない。商売相手が純朴?な農家で、なあなあ主義が罷り通っていたのも一因か。ここでは、(株)熊本畜産流通センター新工場建設での疑惑の一つ「排水処理施設」の業者選定を中心に述べる。同施設は新工場建設に先立つ平成21年6月14日に入札が行われ、有力企業数社の入札価格を大幅に下回ったM工業(株)が落札した(因に最低価格の設定はなかった)。問題は落札したM工業がこの種の施設建設の実績が乏しい点と、同社が三期連続赤字で、監査法人から「企業継続の前程に重要な疑を抱かせる事象又は状況。企業余力も限界」と指摘されていた点にある。だから「鉄砲を打った」とも見えるが、同業他社は「経済連の某理事と親しく、発注後の設計変更等で利益が出る仕組みがあったのではないか」と見る。
技術面も同社は入札前のヒアリングで自社製「回転自雷也」なる装置の優秀性を謳ったが、同装置を使った浄化槽を発注したM畜産興業(株)は、同年3月「完成渡し」が入札日の時にも履行されていなかった。M畜産より処理量が倍増する畜産流通センター関係者が案じて当然である。この事業は総費用55億円、内、国から23億円、県から22億円の助成金が支出されている。実に85%の補助は「旨味がいっぱい」か。新工場(通称第1工場)は建物本体は吉永産業と三ツ矢建設の二社JV。共に政治銘柄の建設会社で、JA中央会の園田会長とも昵懇の仲。ついでに云えば、この三者は県警幹部とも濃い繋りを持つ。で、M工業の自雷也君を使った排水施設は完成。今月2月から稼働している第1工場、第2工場(旧工場)の排水処理を行っている。関係者は「やや問題はあるが大過なく稼働しているとの事である。尚同工場はハセップ(HCCP)の認証を受ける為、今年中を目標にマニュアル書を作成中で、工場の優秀性を誇示している。 |