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発行者:福島 宏

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* コラム [毒含流行論]
2009年12月号掲載
進む高齢化社会 後手に回る老人福祉

 一本の電話から関わり始めた老人福祉問題だが、 社会問題として底なしの闇を見た感じだ。 家庭内での老々介護を支える 「訪問看護ステーション」 も大手の病院が設置しているが、 殆どの所が 「手一杯」 の状態で、 新たに申込んでも 「すぐには応じられない」 と断わられた。 熊本市も地域包括センターを設け、 老人福祉の相談を受けているが、 これもただ 「相談を受ける」 以上の何の頼りにもならない。 ある訪問看護センターに聴いた。 数人の 「ケアマネージャー」 が居て利用者に対して人員を振分けているが 「私の所は一人三十五人を担当、 一人では精一杯の人数です」 と負担の重さを語る。

  国は補助金支出を惜しんでか仲々特養設置を認可しない。 そこに桜ヶ丘福祉会に見るような利権が生れるのである。 それに加え家族間の利害得失も働き、 妻が自分の負担を減らす為に夫を何処でもいい受入れ先を探して放り込む。 ちゃんとした病院や施設は入所待ちが多く、 いつ入れるか分らない。 そこで精神科病院に当ってみる。 本来の精神、 神経科で来院患者が少く、 病床が空いている所は二つ返事で受入れるので結果的に、 その様な病院に落ちつく。

  N氏と話す為筆者が訪れた精神病院もそんな病院の一つであった。 N氏の病棟に行く時通った病室は一部屋六ベットが並び満床である。 入る時に見て出るまで三十〜四十分が経っているが、 出る時に見るとベットの患者は来た時と同じ姿勢で上を向いたまま動いていない。 N氏の話によると、 この病院は 「午後七時になると患者全員に睡眠導入剤を飲ませる」 と云う。 朝まで大人しくさせておく為であろう。 病院の大きさ、 患者数に比べ職員の少なさにこれで合点がいった。 入院患者で動ける者も、 食事が終ると廊下で談話室の如く集い外で陽を浴びる事もない。 看護士らの云うがままに動いて一日が終る。 只生かされているだけの患者に人間の尊厳など微塵もない。 病院はこれで儲け、 家族は介護という重労働から解放される。 この社会の歪みを政党や行政は見て見ぬ振りで逃れている。 今後急速に高齢化社会が進むのは、 人口統計上判っている筈だが行政は常に後手後手にしか回らない。 こんな社会が続く限り日本に未来はない。
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