現在論じられている皇室典範改正(悪)の柱は男系の継続か、女系の導入かと、継承の順位(長子優先、男子優先)の二題に尽きるであろう。その両者が見落としている事がある。それは神武天皇を初代としていることである。この説自体誤りではないが、神武天皇は初の人皇天皇であらされる所から日本書紀(奈良時代に完成した日本最古の勅撰の正史)や、古事記(最古の歴史書、上中下の三巻)でも第一代天皇と位置付けている。
では、神武天皇を遡れば当然の事ながら、神話の御代に辿り着くのである。以下は、影山正治著「神話に學ぶ」(大東塾出版部=昭和四十六年刊)から引用する。
「『天皇国』であるといふことは、神代の高天原の天照大御神以来一貫して居る万世一系の『すめらみことの統られる国』『あまつひつぎの治しめる国』の意味であって『うしはく国』(注・自分のものとして領有する)の意味では決してないのですから、実体的には『神人合一国家』『君民一体国家』の意味にほかならないのです。」
「日本神話の創造神である伊邪那岐・伊邪那美二柱の神は、自らが天つ神でありながら、天の御柱を立て、天之御中主神、高皇産霊神、神皇産霊神など本源の天つ神の御霊を招ぎまつり、その御霊代としての天の御柱を行き廻って、ねんごろに天つ神を祭り、そのことによって二柱の神は本源の天つ神と一体となって『国生み、神生み』の天業を実現してゆかれたわけです」
「さて、この天照大御神の御霊代である神鏡(注・三種の神器の一)は、『神鏡奉斉の神勅』に申されて居るやうに『神代の天皇』とも申すべき天孫邇々芸命、その次の日子穂々手見命、その次の鵜葦草不合命を経て、いはゆる人皇第一代神武天皇以来代十代崇神天皇の御代に至るまでの…以下略」以上略々述べたが、日本の天皇は神代の時代に発しているのである。
ここに史実云々は不要である。必要なのは神代の代から男系天皇の皇統が守られて現代に至っている事実だけである。男系男子を否定するのは、日本の伝統文化を崩壊させる事である。戦後アメリカGHQのゴリ押しで作られた皇室典範だが、そのアメリカにしても皇統の断絶は断念しているのである。
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