市と畜産業者の"調印式"
北口市議は善意の仲介者
仲介放棄が"契約妨害"か
去る6月25日付新聞各紙、テレビニュースは北口和皇市議が恰も「畜産業者と市の調印式」を妨害したかの如く、一斉に報道した。発端は6月1日付「熊本県家畜商組合理事長」の肩書きを持つ(他の肩書は本文中に記す)栗山重信氏が熊本市議会事務局長宛に提出した陳情書に始まる。これを受け同24日に開かれた市議会議会運営委員会で北口議員の発言について、調査委員会を設立するとして公表した。メディア各社はこれに飛びつき、陳述書と市の発表だけを鵜呑みにして、先の無責任極まりない報道を行ったのである。問われるべきは熊本市であり栗山氏である。
熊本市食肉センター(中央区南熊本)は、昭和13年に市営と畜場として開設された。昭和40年4月、古くなった処理機能の改善と施設を改築すると共に、それまで直営であった施設運営を畜産業者熊本中央食肉市場(株)に委託した。この頃が同と畜場のピークで、年間処理頭数25万頭を前後していた。しかし、昭和60年に経済連が菊池市七城町に(株)熊本畜産流通センターを開設した為、県北の業者はそちらに流れた。以後牛馬豚農家などの減少で処理頭数の減少が続いた。加えて市の補助金を当てにした処理料金の低価格経営を続けた為毎年3〜4億円の赤字を垂れ流した。市食肉センター規格豚1200円、大貫〔大型〕豚1600円に対し、畜流センター、規格豚2500円、大貫豚4700円、九州平均、規格豚2100円、大貫豚3000円(各1頭当り)であった。
市は平成18年食肉センターの廃止を決定、業者に通告した。業者らは現在地での改築を望んだが市は拒否。代替施設として七城町の畜流センターを挙げた。「同所では県南業者は距離が遠くなる」として業者らは反対したが、市は西嶋副市長を窓口に畜流センター上村幸男社長(県経済連会長)と交渉を開始した。市は当初牛馬豚を一体的に機能移転したいと交渉したが、上村社長が新施設への補助金増額を求めた為交渉は一旦中断(平成23年12月)した。一方で市は業者に対し平成15年頃「牛馬豚3種とも豊野に行く。費用24億円を負担する」と云っていたにも係わらず、平成23年には「牛馬を豊野に、豚は七城(畜流センター)にした」と一方的に通告した。困惑した業者が某代議士に陳情した為、代議士秘書が昨年4月7日市農水商工局長多野氏と平田次長に面会「畜流センターでは料金が高いので業者が困っている。何故豚だけが七城か」と質した所、多野局長は「環境アセスの問題もあり、住民にアンケートを取ったら『小動物(豚の事)は受入れられない』となったので畜流センターに決めた」と回答し、何ら進展はなかった。
困った業者は農業に詳しい北口和皇市議に仲介を依頼しようと談合したものの、直接北口市議と接点がある業者が居なかった。その為、知人の養豚農家のI氏に紹介を依頼しようと、同年6月10日頃I氏を訪ねた。「北口議員を紹介してほしい」と栗山氏らに頼まれたI氏は数日後東区画図のアピス(温泉施設、レストラン)で、O会長、同社のO社長、N氏、O氏と栗山氏と会って事情を聞き、北口議員に紹介する事にした。
数日後各氏を北口議員に紹介、業者らは「市が自分達を相手にせず一方的に話を進めている。市との話合いをセットしてくれないか」と懇願した。しかし北口議員は「これまで多くの議員が入っても解決出来ない大変な問題を今頃云って来られても困る」と断った。I氏らはその後連日北口議員に仲介を申し入れた為6月下旬頃、北口議員が折れ仲介を承諾した。北口議員が動き7月1日午前、熊本市議会特別応接室で市側(熊本市農水商工局多野局長、平田次長、馬場食肉センター場長)と業者側O会長、O専務、N社長、O社長、N社長の5名と、I氏、北口議員が参加、初めて市と業者、経済連の会合が実現した(それまで市側は業者を拒絶していた)。
陳述書
全日本同和会名が必要か
恩を仇で返した栗山会長
大仰な表現で北口議員を悪者に
熊本市議会事務局長宛に「催促」とも思える「陳情書の提出について」と題した文書を平成27年6月1日付で提出した栗山重信なる人物。同年3月23日付で「大西一史市長、三島良之議長」宛に第1回の陳述書を提出している。同人の肩書きは「熊本市人権協議会 全日本同和会城南支部長、熊本市家畜商組合理事長、熊本中央食肉市場(株)取締役」となっている。
この頓珍漢野郎の陳述書には「熊本市議会議員によるパワーハラスメントについて」と題した文書の冒頭「貴職におかれましては日頃より熊本市営食肉センターの廃止に伴う問題ではご尽力いただいておりますことに関係者一同心より感謝申し上げます。おかげをもちまして、豚業者は畜産流通センター(菊池市七城町)の利活用ができる運びとなりました」として以下北口和皇議員が調印式の場で暴言し、調印式が不調に終わったと結んでいる(詳細は2面で)。
この男、何をとち狂ったのか、感謝すべきは北口議員であり、その仲を取り持ったI氏であるにも係わらず、殆ど無関係の市長、市議会議長に感謝とお礼を申し上げたのである。主目的は文末近くにある「報道機関立ち会いの下見解をお聴かせ下さい」にあると読んだ。
この男が次に陳述書を提出したのは5月15日付、新議長に就任した満永寿博議長、同藤岡照代副議長宛で「熊本市議会議員によるパワーハラスメント(人権侵害)について」と題しているが、ほぼ前回と同様の内容である。違うのは、前日付で熊本市が前回の陳述書に対する回答を行ったらしく「他の調印式出席者からの人権侵害の申出がないので人権侵害に該当するものではない」「関係者の方々が不愉快な思いをされたことは残念である」等を挙げて反論。
同業他者は「何も感じなかった」と云っていますぜ栗山さん。恩を仇で返すのは非人道的と云うのです。
誇張した陳述書と、責任逃れを図る熊本市農水商工局長と、高田副市長の説明を鵜呑みにして裏付けも取らないまま新聞、テレビは北口和皇議員"恫喝"報道を行った。市側寄りのこれらの報道に知識人は眉を顰めている。 |